熟慮期間から1年2ヶ月も経過してしまいましたが、相続放棄は無駄でしょうか。
被相続人の死亡した1年2月の後になされた相続放棄の申述について,この熟慮期間が経過していないとして,これを受理すべきであるとされた事例が存在しています。
この事案は特殊な事案であるし次順位相続人に関するものといえるので一般化できるものであないでしょうが,1年2月経過しても相続放棄の申述受理が認められたケースがあります。この判決のロジックは相続人について相続開始の事実を認識するに至った時期をずらしたものと評価されます。
しかしながら,最高裁判所昭和59年判決が厳しい判決を出しているものの、これを前提としつつ、相続人の保護を図るため、熟慮期間の起算点が繰り下げられるのは、被相続人に相続財産が全くないと信じた場合に限られる「限定説」に立脚する裁判例(福岡高裁決定平成16年3月16日)と等価にするものと評価されます。
具体的には、債務や債権者との合意の内容、経過から、行政庁から通知書を受け取って初めて相続開始の事実を認識したと,認識の時期を後ろ倒しして救済を図る論理を示していますが、こうした決定も弁護士の主張あれこそと考えられます。相続放棄の申述に至る経過や債権者との関係等を踏まえて、熟慮期間の起算点として相続開始の事実を認識するに至った時期を遅らせた事例として参考になるものと考えられます。