遺言書作成のメリット
目次
遺言書を作成するメリットと弁護士に遺言書作成を依頼すべき理由
遺言とは、遺言者の意思を法律関係に反映させる仕組みであり、特に死後の財産関係について遺言者の意思決定を尊重する制度です。本記事では、遺言書を作成することでできることと弁護士に依頼するメリットを説明します。
第1 遺言書の作成でできること
1 相続分の指定
相続分(相続する割合)は民法上決まっています。しかし、この割合を遺言により変更することができます。たとえば、特に世話になった子どもには多く財産を残すために財産の7割を相続させることも可能です。
2 遺贈
遺贈とは、遺言によって特定の財産を贈与することです。例えば、実家で暮らす長男には土地を、遠方の二男には預貯金をというふうに遺贈をすることが可能です。相続人ではない、内縁関係の相手や恩人、慈善団体に遺贈をすることも可能です。
3 推定相続人の廃除
面倒を見ない子どもや離縁状態になっている養子など、財産を相続させたくない相続人がいる場合、排除することが可能です。
4 その他
遺贈には負担を付けることができます。例えば、死後現在飼っているペットの世話をすることやお墓の掃除、自分の葬儀方法の指定をすることなどを条件に遺贈することもできます。
第2 遺言書を残すメリット
1 遺産分割協議しなくても良い
相続財産を各相続人に帰属させる場合、遺産分割協議をするのが通常です。遺産分割協議とは、相続人全員が参加して遺産の相続方法、内容を決定しなければなりません。相続人全員が参加するのが難しく、遺産分割協議がなされないまま遺産が放置されているケースも珍しくありません。
遺言が残されている場合、自筆証書遺言及び秘密証書遺言であれば家庭裁判所の検認手続きを経ることで、公正証書遺言であればそのまま登記や預貯金の名義変更といった遺産分割手続きが可能です。
2 相続人の争いを防ぐことができる
相続分や誰がどの財産を得るかということで相続人同士が争うことは珍しくありません。また、相続人の数が多かったり、養子がいるなど相続関係が複雑だったりすると、さらに揉める可能性が高まります。遺言を残しておくことで遺産分割協議もなく遺産が分配されますから、相続人同士で遺産を巡り争いが起きる余地がなくなります。
第3 遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット
遺言は自筆証書遺言の形で自分だけで作成することが可能です。また、公正証書遺言の形で作成すれば、公証人という専門家のもとで遺言を作成することになるため、遺言の作成方式が間違っていて無効になるということはありません。
しかし、遺言書の作成を弁護士に依頼することには次のようなメリットがあります。
1 的確な遺言の作成が可能
自筆証書遺言を自分で作成する場合、自分で法律を調べ、定められた形式に従って遺言を作成しなければなりません。この形式に反した遺言は無効になってしまいます。また、不適切な表現により遺言が自分の真意と異なる解釈をされる可能性もあります。
公正証書遺言を作成する場合は、遺言者がまず公証役場に遺言書の案を送付して行うことになります。公証人は送られてきた文をチェックして法律上の問題点や適切な表現を指示してくれますが、遺言者の家庭の事情や遺産、相続人の確認といった点について調査まではしてくれません。このため、せっかく公正証書遺言を作成してもあとから債務や相続人が判明したり、遺産だと思っていたものがそうではなかったなどという事情が出てきたりして遺言者の希望する結果にならないこともあります。
弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、まずは打ち合わせをして依頼人の希望をお聞きします。さらに相続人及び遺産の調査をした上で遺言書の案を提案します。このように、弁護士は依頼人の真意と相続関係について深く調査したうえで遺言書を作成しますのでベストな遺言の作成が可能となります。
2 遺言作成の手続を任せられる
遺産の調査、相続人の調査、公証人との交渉や遺言書本文の作成といった手続を弁護士に任せることができます。
3 迅速・確実な遺言内容の実行が可能
遺言作成を弁護士に依頼し、弁護人を遺言執行者に指定することで、迅速確実な遺言の執行が可能です。遺言執行者とは、遺言者の死後遺言内容を実現するための手続を行う者です。
弁護人は遺言の作成段階から依頼人と綿密な打ち合わせをしているため、遺言者の真意を酌んだ的確な遺言執行が可能です。
また、手続も迅速に行うことができますので、遺言の実現がより確実になります。
4 まとめ
遺言は、いざ効力を発生するとき自分では何もできないという特殊性があるため厳格に解釈されます。死後の整理のための遺言でかえって残された方に混乱を引き起こさないためにも、遺言書の作成は慎重・確実に行うべきです。弁護士を利用することで、遺言書の作成時はもちろん遺言の実行段階でもスムーズな手続が可能になります。以上より、遺言書は弁護士を利用して作成することをおすすめします。