相続放棄の流れ
相続放棄を行うときには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」をしなければなりません。この記事では相続放棄の申述をしてから受理されるまでの「流れ」をご説明していきます。
目次
1.相続放棄の申述
まずは被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で「相続放棄の申述」をします。
裁判所の管轄は相続人(相続放棄者)の住所地ではなく「被相続人(故人)の住所地」となるので注意が必要です。
地域ごとの管轄の家庭裁判所は、こちらから確認できます。
必要書類
相続放棄の申述を行う際には、以下の書類が必要です。
- 相続放棄の申述書
まずは「相続放棄の申述書」を作成しましょう。こちらに書式があるので利用してみてください。
すべてのケースで必要な書類
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(相続放棄者)の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本や改正原戸籍謄本のケースもある)
子どもが亡くなっていて孫やひ孫などの代襲相続人が相続放棄する場合
上記に足して以下の書類が必要です。
- 被代襲者(子どもなど本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍謄本)
父母や祖父母などの直系尊属が相続放棄する場合
以下の書類が必要です。
- 被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人がいる場合、その子どもや代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属で相続人より下の代に死亡者がいる場合、死亡者の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
兄弟姉妹や甥姪が相続放棄する場合
以下の書類が必要です。
- 被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人がいる場合、その子どもや代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 被相続人の親などの直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
- 甥姪が相続放棄する場合、被代襲者である兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本,改製原戸籍謄本)
住民票、戸籍謄本類の取得方法
被相続人の住民票の除票は、被相続人の最終の住所地の役所で取得できます。
戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本、戸籍の附票は「本籍地のある役所」で保管されているので、それぞれ本籍地の役所へ申請して取得する必要があります。
住民票も戸籍謄本類も郵便で申請できるので、本籍地が遠方の際には利用しましょう。
費用
相続放棄するときには、1件について800円の収入印紙が必要です。また連絡用の郵便切手も一緒に提出する必要があります。
まずは家庭裁判所で郵便切手の内訳を確認して郵便局で収入印紙と郵便切手を購入しましょう。相続放棄の申述書と上記の必要書類を一緒に被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出すれば、相続放棄の申述ができます。
2.相続放棄の照会に対し回答書を提出
家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出すると、しばらくして家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が送られてきます。
照会書には「被相続人との生前の関わり方」「被相続人の遺産の内容」「被相続人の死亡を知った時期」などについての質問事項が書かれています。
同封されている回答書に答えを書き込んで家庭裁判所へ返送しましょう。
なお、回答内容によっては相続放棄が受理されなくなる可能性があります。特に「相続開始から相続放棄の申述までに3か月以上が経過している場合」、なぜ過ぎてしまったのかきちんと説明できないと受理されにくくなるので注意が必要です。適切に回答できる自信がない方は、弁護士に相談しましょう。
3.相続放棄の受理書が送られてくる
相続放棄の回答書を返送すると、家庭裁判所で内容を審査されます。特段問題がなければ相続放棄者のもとに相続放棄の受理書が送られてきます。
これが届けば無事に相続放棄できたということです。
4.相続放棄にかかる期間
相続放棄の申述をしてから相続放棄が受理されるまでの期間はケースにもよりますが1か月程度です。
5.相続放棄の受理証明書について
相続放棄の受理書は「裁判所できちんと相続手続きが完了している」ことを証明するための重要書類です。債権者から請求を受けたときなどに相続放棄の受理書を示したら、それ以上請求されなくなります。
家庭裁判所から送られてきたら大切に保管しましょう。
また相続放棄が受理されると裁判所から「相続放棄の受理証明書」を発行してもらえるようになります。受理書をなくした場合などに備えて家庭裁判所に「相続放棄の受理証明書」を申請し、1通受け取っておくと良いでしょう。
以上が相続放棄の流れとスケジュールです。
6.相続放棄は一人でできる
相続放棄の申述は、それぞれの相続人が1人でできます。他の相続人と足並みを合わせる必要はありません。
相続開始を知ってから3か月という期間制限もあるので、相続人の立場から外れたければ早めに相続放棄の申述を行いましょう。
7.相続放棄の期間
相続放棄は、基本的に「被相続人の死亡を知ってから3か月以内」に行う必要があります。
この期間を「熟慮期間」といいます。相続放棄の申述時に熟慮期間を超えていると、家庭裁判所に「なぜ期間を超過したのか」説明しなければなりません。「死亡したことを知らなかった」「遺産がないと信じていた」などの理由があれば、相続開始後3か月が経過していても相続放棄が認められる可能性があります。
また熟慮期間が過ぎるまでの間であれば、家庭裁判所に「熟慮期間伸長の申立」をして延長してもらえる可能性があります。相続人が海外居住の場合や遺産内容が複雑なケースなどで延長が認められるケースが多数です。
ただし熟慮期間伸長の申立は熟慮期間内に行う必要があるので、早めに対応しましょう。
相続放棄を確実に受理してもらうには、弁護士に任せる方が安心です。当事務所では相続案件への支援を積極的に進めていますので、名古屋で相続人の立場となり不安のある方はお早めにご相談下さい。