生命保険金と特別受益【続き】

特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考量して判断すべきである。

 

基本的には保険金の額、その額の遺産総額に対する比率等の客観的な事情により、著しい不平等が生じないかを判断し、さらに身分関係や生活実態等その他の事情からそれが公平を損なうといえないかどうかを判断することになるのではないかと解されている。

 

東京高決平成17年10月27日家月58巻5号94頁が、被相続人の子ども2人が相続人というケースを取り上げています。そして遺産総額は1億134万円でした。そして、抗告人が合計1億129万円の死亡保険金を受領したというものです。

つまり、遺産総額に対する比率は、およそ100パーセントという事案でした。

 

抗告人は保険金の受取人になっていて、その保険金を受領したことにより遺産の総額に匹敵する巨額の利益を得ており、受取人が変更された時期やその当時抗告人が被相続人と同居しておらず、被相続人夫婦の扶養や療養介護を託するといった明確な意図のもとに上記受取人の変更がされたと認めるのは困難であるとしました。

 

そうすると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情があることが明らかであるとしました。こうして、死亡保険金は特別受益に準じて持ち戻しの対象とされました。

 

また、名古屋高決平成18年3月27日家月58巻10号66頁は、相続人が被相続人の妻、先妻との間の子2名、相続開始時の遺産総額が8000万円の事案につき妻が取得する死亡保険金の額が5200万円であるとしてかなり高額であるとしました。そして、相続開始時の遺産総額の61パーセントを占めることになること、婚姻期間が3年5ヶ月程度であることを考慮して持ち戻しを認めています。

 

最高裁の示す特段の事情については、持ち戻し免除の意思を推認するか否かを考慮するための要素と重複していると解される。すなわち、具体的事件について、あえて持ち戻す必要がない場合については、黙示の持ち戻しを免除する意思を推認するものと評価して整合するものと解される。なお、最高裁の基準以外に保険金額が、一般的な相場と比べてかなり高額である場合や、遺産総額が極めて少額である結果、保険金との均衡を著しく失する場合にも、最高裁判例の射程が及ぶものと解される。

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