遺言の内容が公序良俗に違反する場合ってどんな場合?
一般的には、
- 遺言の内容の全部又は一部が公序良俗に反する場合です。
- 重婚的な内縁関係にある不倫相手に対する遺贈を内容とする遺言が典型例です。
目次
1.不倫相手に対する遺贈の問題点とは
被相続人が、法律上の配偶者以外の相手と一定期間にわたり夫婦同様の生活を営む重畳的内縁の場合、その不倫相手に対して遺贈をすることもあります。
いちがいに直ちに公序良俗に反すると即断することはできませんが、このような不倫相手との関係は、実質的には重婚として重婚的内縁関係といわれることがあります。
愛人がいる場合でも同じように考えることができるでしょう。
そこで、相続人側としては、法律上許容される関係ではないとして、重婚的内縁関係にある不倫相手に対する遺言者の遺贈について公序良俗に反しないのでしょうか。
2.判例
最判昭和61年11月20日は、妻子ある男性が不倫相手に対して遺産の3分の1を包括遺贈したという事案を扱いました。
この点、1)妻との婚姻の実態をある程度失っていること、2)内縁期間が7年も継続していたこと、3)死亡の1年2か月前に作成されており、4)相続発生時の当時の民法では配偶者の法定相続分は3分の1であり法定相続制度を参照したと考えられること、5)こどもはすでに婚姻しており高校の講師として稼働していること等の事実関係を指摘しました。
そのうえで、「本件遺言は不倫な関係の維持関係を目的とするものではなく、もっぱら生計を男性に頼っていた被上告人の生活を保全するためにされたものというべきであり、また、右遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえない」として公序良俗に反しないとしています。
比較的、別居期間が長い場合において、遺言の有効性が、不倫相手の生活維持との認定となりやすいと考えられます。
3.まとめ
以上によると、メルクマールとしては、以下のパターンが挙げられます。
- 婚姻の実態をある程度失った状態であるパターン
- 内縁関係がある程度継続した後であるパターンか
- 遺贈の目的(不倫相手との関係維持を目的とするものは認められない。)
- 遺贈の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすパターンか
―こうした点を総合考量して、遺贈が公序良俗に反するパターンかを判断しているといえます。遺言で、公序良俗に反する内容のものがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。