遺留分権利者が有する権利の見直し

遺言や死因贈与、生前贈与によって遺留分を侵害されたら「遺留分侵害額請求」できます。
ただ、改正前民法では、遺留分権利者が権利を行使すると、「物権的効果」が生じるものと考えられていて、遺留分を侵害する遺贈又は贈与の全部又は一部が当然に無効となり、一部無効の場合は「共有」になるものとされていました。

しかし、物権的効果は効力が大きすぎるといえ、事業承継に支障が生じたり、共有関係の解消をめぐったりして新たな調停が起きるなどの問題がありました。
そこで改正法では、遺留分権利者に遺留分侵害者に相当する価値を返還することで十分と考えられるようになりました。
このため、改正民法は、遺留分を侵害する遺贈等の効力を維持することを前提としたうえで、遺留分権利者は、「形成権」として、遺留分に関する権利を有するものの、あくまでも「金銭を請求する権利が発生する」のみと構成し直されました。
このことから、名称も、「遺留分侵害額請求権」に改めています。

1.遺贈等を受けた者に対する期限の許与遺留分侵害額請求とは

これまでは、遺留分減殺請求がされた場合、遺産分割調停に載せるということがかんがえられましたが、「遺贈等を受けた者に対し遺留分侵害額に相当する金銭を請求する権利」と構成し直されることになりましたので、すぐには金銭を準備できない事態が予想されます。
そこで、遺贈等を受けた者の金銭の請求により、裁判所が金銭債務の全部又は一部の支払につき相当な期限を猶予することができるようになったのです。(民法1047条)
遺留分侵害額請求とは、侵害された「遺留分」を取り戻すための手続きです。
遺留分とは兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分ですが、不公平な遺言や贈与によって遺留分を侵害されたら遺留分侵害額請求を行って「お金」で取り戻せます。
改正民法では、遺贈等を受けた者の遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務額の限度で遺留分侵害額請求権に基づく債務を消滅させることができるになっています。(民法1047条3項)
このように、遺留分制度の根拠の一面として被相続人による財産処分の自由を尊重する観点からも「物権的効果」まで認めるのは被相続人の意向を無にするものといわれていました。
そこで、今回の改正では、遺留分権利者の権利行使によって生じる効果について、物権的効果が発生するとされていたものを見直して、遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生するものになったのです。(民法1046条)

2.まとめ

以前の民法では遺産そのものを取り戻す「遺留分減殺請求権」という権利が認められていましたが、2019年7月1日から改正民法が施行され、お金で取り戻す「遺留分侵害額請求権」に変更されました。
遺留分侵害額請求の際、当事者同士で話し合うと感情的になってトラブルに発展してしまうリスクが高くなります。当事務所の弁護士は遺留分の取り戻しを始めとした相続案件に積極的に取り組んでおり、経験もノウハウも蓄積しています。スムーズに遺留分の支払を受けたいなら是非、ご相談下さい。

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