預金と遺産分割につきまして
金融機関は、相続人全員の署名・捺印を要求するというのが一般でした。しかし、これを否定したのが当然分割承継説でした(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁)。
今般では、預金債権につき一部の相続人が、法定相続分の払い戻しを単独で請求する事案が増加しました。最高裁もこれを認めています。(最判平成16年4月20日金法1711号32頁)
しかし、当然分割されず遺産分割の対象となるという最高裁判例が出されました(大法廷平成28年12月19日)。
さて、この平成28年判例については可分債権一般には及ばないものの相続預金については,妥当するものです。
およそ預貯金については、遺産分割が終了する前において一部の相続人から法定相続分につき単独請求をすることができなくなり、相続人全員の署名・押印・印鑑証明が必要との実務が追認される形式となりました。
かかる決定は非嫡出子決定のように時間的制約はありません。したがって、平成28年以降すべて即時に適用されるものです。
なお、調査官解説によれば、被相続人に対する相続人の債権はもとより、相続人に対する債権とも相殺可能であると示されており、かなり預貯金は集合体としての独立性が高いと考えられます。