ほぼ唯一の財産を生前贈与して相続放棄した場合
AさんとBさんは婚姻をしていますが、夫のBさんには前妻との間のこどものCさんがいます。
他方、AさんもBさんも、普通の会社員であり、数年前に中古のマンションを購入し、現金などの流動資産は少なくなってしまいました。
そうした中、Bさんがなくなりました。Bさんはすべての財産をAさんに相続させる遺言をのこしていましたが、Aさんは、Bさんには負債もあったことから相続放棄をしました。
そこで唯一の相続人となったCから、Aさんは、遺留分減殺請求を受ける可能性はあるのでしょうか。
まず、注意点としてAさんは相続放棄をしなければ生前贈与のマンションは特別受益になります。相続放棄をした場合は、実は第三者に対する生前贈与として考えることになっています。
第三者の場合、相続開始一年前、または遺留分を侵害することを知ってした贈与については、遺留分の算定の基礎とされてしまいます。
つまり、相続放棄をしたとしても、生前贈与の一部が持ち戻しの対象になるものと考えられるのです。
現実問題、AさんとBさんとで、Cさんを意識した相続対策として行ったものですから、他に流動資産も乏しいなどの事情の下では、遺留分の算定の基礎、わかりやすくいえば、みなし相続財産に含まれてしまいます。
例えば、BさんからAさんへのマンションの贈与が1000万円のものとします。そしてAさんは相続放棄をしましたが、遺留分の権利侵害をしっており、その他流動資産が200万円があったとします。
そうすると、みなし相続財産は1200万円となり、計算式上は、Cは唯一の相続人ですので、今ある200万円に加えて、1200万円×4分の1=300万円が遺留分となるわけですが、相続分として200万円取得しますから、残額の100万円について、Aさんに遺留分減殺請求権を行使することができることになります。
明晰にいいますと、相続対策の場合、遺留分の侵害を知って行うわけです。
生前贈与+相続放棄という方法もりますが、相続放棄をしない方法もあります。
遺言がある場合、遺留分は300万円となりますから、Aさんとしては、200万円+100万円の持ち出しとなります。
そうすると、計算上は、相続放棄をして遺留分減殺請求を受ける場合と余り、結論において変わらないように民法上の考察からは思われます。